Heaven Burns Red 感想 ~麻枝准はゴールしたか~

おぎの稔議員元ネタ解説bot on Twitter: "【もうゴール、してもいいよね】 出典:AIR(Key)  恋愛ゲーム「AIR」のメインヒロイン・神尾観鈴の台詞。詳しい内容は深刻なネタバレになるため控えるが、「もう諦めてもいいよね?」くらいの哀しい意味。  https://t.co/GOvgQwWnsY ...
ゴールしてしまったのか

お世話になっております。チャイナです。

今回は一部界隈で話題になっているHeaven Burns Red(以下、ヘブバン)についてレビューします。

☆注意

  • 1章までのプレイです
  • 麻枝氏の作品についてはKanon、Air、CLANNAD、リトバス、AB、シャーロット、神様になった日については履修しています(アニメ、部分的を含みます)
  • シナリオの中身についての感想も含めますが、ネタバレ部分は後半に分けて書きます
  • 筆者はソシャゲはガルパとハチナイしかやったことがありません、なので記事の内容でもそれはソシャゲではふつう、みたいな内容があるかもしれません

☆前提

ゲームの内容については省きます。無料ですので、頑張ってリセマラしてください。

このゲームの特徴は、何といっても麻枝准氏によってメインシナリオが執筆されているという点でしょう。同氏が一世を風靡したライターであることに異論を唱える人間はいないはずです。しかし近年の作品はお世辞にも世間で高く評価されているものではなく、今回の作品は発売前から最後のチャンスなどと揶揄されていました(個人的にはHeaven Burns Redというタイトルはメタルコア・ハードコアファンとしては麻枝氏の得意そうなバンドをプッシュしたシナリオになるのでは、と期待していました(後述))。開発の告知自体は相当前(3年ほど?)から行われていた記憶がありますが、あまりに同氏の最近の作品の評判がよろしくなかったこともありロクに開発されていないのではだとか、トンズラしたのではないかだとか、散々な言われようでした。ですが、いざ公開が目前となると宣伝に乃木坂46のアイドルを登用したCMを打ったり、有名声優を起用したり、SNSでも宣伝を出しまくったりなど、力の入りようがうかがえます。実際ソシャゲとしての完成度自体は高かったように思えます。

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こんな涙、あったんだ。(迫真)

上記より、こんだけ力と金をかけたゲームを今や2割スラッガー打者と化したライターの成分をゲーム内容に前面に出してくる作品に仕上げてくるとはあまり考えられないのでは、というのがプレイ前の予想でした。しかし、その予想は大きく覆されることになります。

では、次項より各要素について話していきます。

☆ギャグ

ゲームを語るうえで、いきなり「ギャグ」から触れることになるのは自分でも異常だとは感じています。しかし実際問題そうせざるを得ません。現状、このゲームにおけるギャグは相当高いものです。というのも、シナリオにギャグがとんでもない密度でぶち込まれます。1イベントで10発くらいです。これは誇張表現ではなく、本当に1イベントで10発ギャグが来ます。

ネタ】ヘブバンはアサルトリリィより面白そうなのか?
実家のような安心感

ジャパニーズ・トラディショナル・ボケ・アンド・ノリツッコミですね。いわゆる便座カバー(なつかしすぎる)的なアレです。麻枝氏の手掛けた作品ということで、やはりシナリオ面が発売前からプッシュされていたのですが、お世辞にも世間全体にウケているとは言い難いギャグが事前シナリオの一部公開のうち大部分がギャグパートで占められていて、いや広報下手すぎるだろと思っていたのですが、それは間違いでした。あまりにギャグの密度が高すぎて、シナリオのどこを切り取ってもかなりの割合でギャグが入ってしまうのです。

ギャグの内容については、正直、個人的には面白いとは思えませんでした…。が、人間不思議なもので、ギャグを浴び始めた当初(入隊式あたり)は共感性羞恥のような感覚に陥るのですが、何度も何度も浴びていると、不思議と慣れて何も感じなくなってきます。そして、ああこれは面白いかもしれんな、と一部のギャグに対しては思えるようにすらなってきます。というのも今作のギャグパートは信じられないくらいテンポが良く、嵐のように過ぎ去っていくため、ギャグパートについていちいちイライラする余裕すらないのです。ここは構成として上手いと思いました。麻枝氏のギャグパートといえばうんざりするくらいしつこいのが特徴で、この作品についてもそのしつこさは健在です。しかしどんなにしつこくてもテンポの嵐で一瞬で吹きぬいてくれます。そこは過去作との違いです。

ギャグの中身についてはいつも通りです。この面で特に劣化したとかはないと思います。便座カバーが面白かったか、そういう事です。

あと主に主人公の下ネタが多いです。ここについては後述。

なにこれ

☆システム

拠点となるマップがあってそこでキャラと会話したりイベントを発生させたり、という流れです。ただその際にキャラをある程度自分で操作して移動する必要があり(ファストトラベルはあります)、ショップや周回?などはメニューからボタンを開いて行うのではなく基本的には該当エリアにまで移動して行うという流れです。いわゆるRPGライクな構成になっています。これは若干面倒ではあります。ですが、道行くキャラのちょこっと出る会話のようなものが結構面白かったりするので、これはこれで悪くはないですね。フルボイスなのもやっぱり良いです。

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店員のデザインがめっちゃゆーげんっぽい

そしてここはかなり評価ポイントですが、こういうマップ内会話などってすぐに全て既出のものになりがちですが、ゲームの進行に合わせて内容や状況が変化します。具体的にはメインシナリオの間に自由時間という形で行動できるタイミングがあり、そこで上記諸々をこなすスタイルですね。なので、原則キャラや状況、店の品揃えもシナリオの進み具合に応じた形になっており、これはいいなと思いました。ここもRPGライクに作っているなという印象です、最近のソシャゲでは結構こういう形もあるんでしょうか?

ただ、この形って完全に買い切りゲームに適応したものだと思うのですよね。後述しますが、原則終わりのないソシャゲでどう風呂敷をたたむか、は気になるところです。

☆グラフィック

個人的には結構良いのでは?と思います。会話シーンは一部ギャルゲー方式の立ち絵になりますが、この形がゆーげん氏のイラストを活かすベストプラクティスで結局あると思うので不満はありません。

学園生活思い出すな~(笑)

3Dモデルも十分かわいいですよね。フィリスのアトリエのような違和感もありません。上記のシステムも含めて、ゲーム部分はそこそこ丁寧に作られてるなという印象。

☆戦闘

ソシャゲの戦闘という感じではあります。コマンド式RPGベースですが、そこそこ簡略化されていてカジュアルに取り組めます。ですが、ある程度戦略性もあり、戦闘が致命的に面白くないという感じでもなく、そこそこ楽しめています。ソシャゲのカジュアルさとRPGの戦略性のバランスとしては、いい塩梅なんじゃないでしょうか?攻撃した後のキャラの掛け合いなんかも結構好きですね。

意外と仲良い

バトルシステム面は良いのですが、スキルモーションや敵のグラフィックは使いまわしが多いです。まあここに関してはこんなもんなんでしょう。そこに重きを置いているわけでは明らかにないと思うので。

ですが、結構SSRとSでキャラ性能差があります。ここまでで何回か死にましたので、今後詰まることはありそうです。ガチャが結構渋いので、メインシナリオ一本のこのゲーム構造でガチャの引きの悪さでゲームの進行に支障が出たら嫌だな~とは思うのですが、その辺ソシャゲとしてはどうなんでしょうかね?

☆音楽(ほんの少しシナリオのネタバレ含みます)

このゲームは音楽がフィーチャーされていることは明らかです。Heaven Burns Red というゲーム名からしてああバンド絡んでくるんだろうなと予想できます。少なくともボーカル曲は麻枝氏による作曲ではあるようです。私は楽曲面では同氏のファンであり、自身の楽曲面でも多かれ少なかれ影響は受けているのですが、最近の楽曲(やなぎなぎ氏と組み始めた以降?)は悪くはないんだが、昔ほどのパンチ力はないかも…という印象でした。正直今回の楽曲もその例にもれず、昔のようにヴォイ泣き必死の名曲連発、という感じではないです。個人的な印象ですが。

が、ライブシーンで演奏された曲は本当に良かったです。やっぱり同氏の楽曲を評価する時、曲単体で聴いているのではなくゲームの内容とリンクしての評価だったのかもと改めて思いました。僕自身周りの人間でバンド組んでうっしゃスタジオ入るべからの音楽っていいなあ…と絆深まる展開に激アマおじさんなので、そのピークとなるライブシーンはこのゲームで個人的には一番良かった点であると思うのですが、みなさんどうですかね。結構使い古された展開ではあるので、もうええて、という印象な人もいるかもしれません。

令和はバンドが流行る

Heaven Burns Redというタイトルから、ワンチャンハードコアが楽曲面でフィーチャーされるのでは…と少し危惧感と期待感がもともとあったのですが、マジでされましたね。いやほんの少しではあるのですが…

それ関連で一つ苦言を呈するのであれば、ギャグとしてのハードコア要素が誰も幸せになっていない点です。特に入隊式のOrchid関連や、目覚ましのくだりなんかは、ハードコアバンドに詳しくない人はわけわからないでしょうし、ゲームプレイヤーに数人いるかいないかなんじゃないかというわかる人もムッとなるタイプのネタの仕方です。同氏がエモ・ハードコアに造詣が深いことは十分に理解しています。なので、そんな誰も知らないネタには触れないのがベストでありながらそれでも触れるのであれば、同じファンとして尚更リスペクトが見える形で話に取り入れて欲しかった、と思いました。

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でもデプレの売り上げ21枚はリアルでおもろい

同氏は楽曲面で特にAB!の頃当たりでハードコア・メタルコアの影響を如実に受けていたことはよくわかります。僕もそのころの作風が一番好みなので、楽曲に関しては今後も期待ですね。ヘブバンを開発してたであろう時期はデプレッシブスーサイダルブラックメタル(本当にあるジャンルです)にハマっている、みたいなのはどこかで見た気がします。AB時代のブログは影響やルーツが良くわかって面白いので読んでみるといいと思います。

http://key.visualarts.gr.jp/angelbeats/blog/2009/07/post_6.html

補足しておくと、Heaven Burns Redというタイトルは「Heaven Shall Burn」と「August Burns Red」という有名なメタルコアバンドから取ったと考えられます。メタルコアバンドなんて現代には履いて捨てるほど存在するのですが、その中でこの2バンドは圧倒的にメロディの質が良くカッコよさも随一であるバンドです。このバンドチョイスは流石センスが反映されている、と思います。シンプルな進行に印象的なメロディを乗せるこの2バンドのスタイルは同氏の楽曲の特徴と一致していますよね。ABRについては変拍子まで出てきます。

マジでかっこいい

☆シナリオ(ネタバレ含)

ここからはシナリオについて書いていきます。1章までとはいえネタバレを含むので注意してください。シナリオの中でも各要素について分けて書きます。

◎設定

まず世界観・舞台設定についてですが、説明不足。この一言につきます。ポストクライム的世界観であるにしては明らかに謎だったり明言されていないことが多すぎるのですが、前述のギャグでどんどんスルーしていき、プレイヤーにはほとんどが明かされないままです。勿論少しづつ明らかになった謎(謎が解明するのではなく、謎があることが明らかになる)もあるのですが、本当に少しづつ疑問を投げかけ始める、という感じです。

ですが、この説明不足はいつもの手法なんですよね。カノンもエアーもリトルバスターズも、みんなそう。今回は舞台が特徴的であるが故に意図的に何かを隠そうとしているのが見えているというだけであると思います。ここは今後に引き続き期待ですね。

◎脚本構成

…どう収集させるんだろうという印象です。というのも、麻枝氏のシナリオ構成とソシャゲというシステムの相性が致命的な気しかしないからです。ソシャゲは原則人を殺すことはしない(するんですかね?)気がしますし、なんせ明確な終わりのラインが引かれていません。

同氏の作風において終わりの存在はあまりにも重要です。長い長い日常パートも、つまらないギャグパートも、その向こう側にあるカタルシスがあるから頑張れるのです。ですが、ソシャゲとしてリリースされた手前その線引きは存在せず、プレイヤーはゴールテープのないマラソンを永遠に走らされる、とも言えます。とはいえ今回はノベルゲームではなくゲーム性も存在するので一概に同じとは言えませんが、シナリオを読んでいるとどうもいつものKeyの日常パートをやっている感覚と同じです。

1章までで感動する要素は確かにあります。悪くはなかったです。前述のライブシーンでも不覚にもジ~ンときてしまったりしたので、確かにそこにはカタルシスは小さいながらありました。しかし、まだ弱いのです。1章のような小さなカタルシスを繰り返すことが感動なのであれば別にメインシナリオ:麻枝准である必要はないと思います。もっと別の何か…シナリオの根底を形となる何か…そんなものがきっとある(あると信じている)のでしょうが、そこで障壁となるのがソシャゲというリリース構造です。そんなシナリオの根底を揺るがすものが出てしまえばそのゲームはもう終了に向かって突き進む以外の道がなくなるので、そこがゴールのないソシャゲと完全に相性が悪いのですよね。シナリオ内では明確に人口〇〇人にすることが目的、と明示してしまっています。

上述の議論は今までの手法を考えると、という話でしかありません。ですので、これからの展開に期待しましょう。

◎キャラの感性矛盾

個人的に一番気になっているのはここです。キャラの感性が揺れ動きすぎてわけがわからない、という点です。

具体的にはギャグパートで全開でヘラヘラしてたキャラが突然クソ真面目になって、またすぐヘラヘラする、という流れです。こういうキャラ付けは以前よりあったと思うのですが、今回はヘラヘラしているのと真面目にやっているのの行き来が激しすぎてどっちの感情が本当なんだよ、と言いたくなります。主人公がそうなのはまあKeyのシナリオ展開ならまあ、、、という感じですが、他のキャラクターも引っ張られてしまっているのもポイント。

レビュー】『ヘブンバーンズレッド』は濃すぎるキャラと怒涛のギャグに圧倒される! 戦闘も歯ごたえあり!! - 電撃オンライン
はい

最も如実だったのが1章終盤の防衛線で「俺たちの使命は住人の命を守ることだ!」的な感じでチームが一丸奮起するのですが、チーム内に殺人鬼いますからね。殺人鬼であるということが明かされたときも他のキャラクターは「ふ~ん、あっそ」という感じだったのにここで突然命を重く受け止め始めるのは若干違和感があります。

また特定のキャラクターの記憶が保持できない、ということが明らかになった場面でも直面している事実とスールしてきたことの重さのバランスでモヤモヤがちょっと起こってしまいました。あああれはスルーするけど、これは君らにとっては重要なのね、という感じ。

正直に言うと、ゲームやってる最中は結構アツくプレイできたので、僕自身スルー出来ていたんですよね。でもあれ、冷静に考えるとおかしくね、となってしまった、そういう流れです。

◎主人公

主人公の評価は相当別れそうですが、僕は結構好きですね。基本的にはとぼけていてヘラヘラしているが、強いカリスマ性を発揮する漢(女の子ですが)というキャラ像です。こういう主人公像はイライラしませんし良いです。

クールキャラかと思いきや結構誰にでも絡みに行くんですよね、本当の意味で分け隔てなく他人と接し、場を形作る、ニクい主人公です。Key作品主人公って基本的にはナイスガイですよね。普段ヘラヘラしていてもいざという時は圧倒的漢を発揮するというKey作品主人公の例に漏れていないと思います。なので萌え萌え群像劇を期待すると肩透かしを食らいます。主人公は女の子ですが、いつものKey作品ナイスガイ主人公であると考えたほうがいいです。そういう意味では演じる楠木ともりさんは明確な被害者であると言えます。

一方で、この主人公こそが最大の謎でもあります。明確なキャラ設定がされているわりに、自分についての情報が全然ない。バンドやってた意外なんもわかってないですよね。前述の設定の説明不足の最たる部分で、おそらくここは核心になってくるんじゃないかと思います。なんかホームの猫のいる部屋なんかも意味深ですしね。そもそも心情の描写が皆無であるので、ヘラヘラギャグやっている自分とは別に、深いとこでは世界を達観している自分がいました、みたいなことがある気がします。ここはあくまで推測ですが…。

茅森月歌 | CHARACTER | ヘブンバーンズレッド 公式サイト
デザインは100点

なので今後世界はは主人公を中心として進むのかなと思います。シナリオそのものよりもソシャゲという媒体でそれをどう効果的に描くかという点が問題な気がします。

☆総評

ソーシャルゲームとして相当良くできていると思います。細かに配慮がなされており、戦闘・グラフィック・システム等ゲーム部分を司る部分の出来も極めて高いです。ですがそれでも尚、100%麻枝准であり、Key作品です。少しプレイすると言っていることがわかると思います。そう思ってしまうくらい脚本の癖というかインパクトが強烈なのです。これは別にギャグパートに限った話でもなく、やはり同氏は何か特筆すべきものを持っているのでしょう。結局のところ、ヘブバンを楽しめるかどうかはKey作品を楽しめるかどうかに帰着すると思います。同氏の気合は十分に感じられ、自分の得意な要素をフルに取り込み、本気であることは感じられました。ですが、原点回帰と思えるような点もいくつかあるので、良くも悪くも昔のギャルゲの日常パートをやっている感覚にはどうしてもなってしまいます。戦闘とかキャラ移動とかありますけど、やっぱりシナリオが推されていますしそこの印象がほとんどです。

結構批判的なことも書いてしまいましたが、僕個人の印象としては今のところそこそこ良いです。シナリオ面で気になるところとかこれどうやって決着つけるんだよとか思うところもありましたが、ゲームとしての作りの良さとキャラの可愛さも相まってなんだかんだここまでは楽しくプレイできています。ですが、ここからは確実にシナリオで評価が決まりますゴールするのが麻枝准ですが、現状そのゴールは存在すら確認できません。永遠と日常パートが続くのか、それとも、、、今後に期待しましょう。